重度統合失調症者の生活機能に及ぼす動物介在療法の影響 予備的研究
最新精神医学
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377-382
石田 賢哉, 坂下 智恵, 山田 伸, 北條 敬, 前田 優子, 高橋 加奈子
動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)は、慢性統合失調症者の生活機能を改善させる可能性がある。今回、犬を用いたAATが長期入院中の慢性統合失調症患者の生活機能に及ぼす影響を前後比較デザインにより予備的に評価し、その影響と関連する患者の行動特性を探索した。専門スタッフが訓練犬を用いる構造的なAATを32名の長期入院者(年齢43±13歳)に6ヵ月間実施した。生活機能を社会適応機能尺度により評価し、総得点ならびに道具的な生活技能とセルフケア、衝動コントロールおよび社会生活技能の下位尺度得点の変化量を測定した。ベースラインの行動特性を精神科リハビリテーション行動評価尺度により評価した。AAT施行前後に、施設における生活機能全般に比較的小さな改善(GlassのΔ:0.30)が認められ、3つの下位尺度にも改善がみられた。回帰分析の結果、ベースライン時の社会的活動性や社会生活の技術あるいは逸脱行為制御の水準が低い患者ほど生活機能の改善の程度が大きい傾向を認めた。(著者抄録)