筆者は、漆器を対象としたテーブルウェアのデザインに取り組んできた。2016 年4 月から2018 年3 月にかけては、株式
会社浄法寺(じょうぼうじ)漆産業からの依頼により酒器をテーマとする機会があり、日本酒を注ぐための片口(図1)のリ・
デザインを担当することになった。
対象となった片口は、浄法寺漆器の特徴である「純日本産の漆」を使用した、優れた工芸品であった。しかし漆を塗るため
の素地である「木地」が作りにくいものであり、生産数を確保できずに長期欠品が続いていた。
生産工程を検証した結果、問題点は液体の「注ぎ口」における接合部であることが判明した。この部分が伝統的な木工ろく
ろ(図2)による挽物としては制作できず、結果として手加工による部品の接着(接合)が必要となり、生産性を著しく低下
させていた。現代的な機械加工にて解決する方法も考えられたが、産地のイメージから考えると「伝統的な手仕事」に対する
拘りも必要であると感じられた。
これらの結果から、木工ろくろを活用した片口を生産するため、新たな「注ぎ口」の形状を研究することになった。