1.研究目的
本報告は、中山間地域に分類されるA県B市において実施されている「要介護者の在宅生活支援活動」に対する、一般地域住民の意識と態度の分析を通して、地域包括ケアシステムにおける地域住民の主体形成のあり方について検討することを、目的としている。
2.方法
B市社会福祉協議会との協議を踏まえて確定した調査票をもとに、平成26年12月~平成27年1月にA県B市(C地区、D地区、E地区)在住20歳以上男女2,250名(各地区750名)を対象とする質問紙調査を行い、その結果得られたデータを統計処理ソフトIBM-SPSS-BASE(Ver.22)を用いて集計・分析した。対象者抽出は選挙人名簿抄本に基づく無作為抽出法、調査票の配布回収は郵送法によって実施し、有効回収率は38.6%であった。
3.倫理的配慮
本研究では、日本地域福祉学会倫理規程に基づき、調査対象者に対し協力依頼文書によって調査目的、データの取り扱い方法、結果の公表方法等について説明し、協力に同意した者のみから回答を得ている。また、分析・報告においては回答者が特定されないように配慮している。
4.内容
主な調査結果は下記の通りであった(3地区合算)。
(1)要介護時の在宅生活必須条件(複数回答):「住民どうしの助け合い」(31.9%)をあげた回答者は約3割で、「自分自身の心がけ」(56.2%)、「夫婦の支え合い」(57.7%)、「在宅医療介護サービス」(61.6%)の半数程度であった。また、「子どもからの支援」(24.9%)はこれら5項目のなかで最も低かった。
(2)要介護者在宅生活支援活動に対する認知度・支持度・支持理由:活動認知度は64.9%、活動支持度は93.0%。支持理由(複数回答)は、「将来自分や家族が地域からの支援を必要とするかもしれない(将来保障的利己主義)」(69.3%)、「高齢化と世帯人員減少によって生じる課題は住民の支え合いで解決すべき(理念的互助主義)」(52.7%)、「地域からの支援が必要な方を知っている(現実的互助主義)」(35.7%)等であった。
(3) 要介護者在宅生活支援活動への参加度と参加意欲:参加度については、「現在、ご近所で気になっている方をさりげなく見守っている」(27.4%)、「現在、参加していない」(48.7%)、また参加意欲については、「今後、ご近所で気になっている方をさりげなく見守りたい」(55.0%)、「今後も参加意欲なし」(11.8%)、等であった。
5.結論
調査対象地区では、(1)の結果から、要介護者在宅生活支援活動に関わる住民は3割程度であるが、(3)の結果から、さらに3割程度が新規参加する可能性が潜在的にあることが明らかとなった。この顕在化のためには、(2)の結果で多数を占める「将来保障的利己主義」を足場としながら、「理念的互助主義」「現実的互助主義」への転換を図るための「はたらきかけ」と「しくみ」が求められているものと考えられる。
※本報告は、JSPS文部科学省科学研究費補助金助成事業基盤研究C「地方中小自治体におけるインフォーマルケアシステム構築に関する比較事例研究」(課題番号25380756)の助成を受けて実施したものである。