本稿は、日本社会保障法学会第76回大会ミニシンポジウム「犯罪をした知的障害者の社会復帰支援」での報告をもとに、当日の質疑応答の内容などを踏まえて、執筆した論文である。従来の刑事政策の対応とは異なる、犯罪をした人への福祉による支援の内容の一端を明らかにし、議論の一助とすることを目的として、本稿では知的障がいがあって犯罪をした人への福祉による支援の理論的基盤と課題について検討した。まず、支援対象者が経験する社会的孤立と多様で複雑化した支援ニーズについて確認し、次にソーシャルワークにおいて広く用いられている「生活モデル」に依拠した支援対象者の理解ならびに「ソーシャルサポート」に基づいた支援が理論的基盤をなり得ることを説明したうえで、最後に福祉による支援の課題とそれらへの対応のあり方について若干の検討を試みた。
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