導入前の看護実践分析と看護管理者の視点
第7回日本臨床知識学会学術集会
日本臨床知識学会
東京大学本郷キャンパス 山上会館
2023/02/18
井上 真奈美1)、渡邊 千登世2)、大森美保3)、水流 聡子4)1)山口県立大学看護栄養学部看護学科、2)神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部看護学科3)帝京科学大学医療科学部、4)東京大学 総括プロジェクト機構「Quality とHealthを基盤におくサービスエクセレンス社会システテム工学」総括寄付講座
適切で質の高い医療の提供を行うためには、リアルタイムの患者状況を反映した情報をもとに判断され共有された方針で医療が提供されることが好ましい。しかし、看護実践記録については、業務終了後の記載(時間外勤務増)や叙述記録(再利用が困難)が散見され、実践との乖離が否めない。アプリケーション上に搭載する看護の臨床知識コンテンツ(通称:看護ナビコンテンツ)は、基本設計を内科系と外科系と大きく二分しその構造を軸に開発されている。観察項目とケア項目がセットされコンテンツの選択によりリアルタイムの計画立案を可能とし、観察漏れを生じず不要な叙述記録の少ない実施記録を可能にしている。看護ナビコンテンツ作成のプロセスとシステム導入前準備における「看護ナビコンテンツ作成を介したコンサルテーション」の実際について報告する。看護ナビコンテンツ作成へ積極的な参加の意向を示した看護管理者は、独自に組織の現状を分析し看護記録に要する時間と労力の多さや現状反映状況について強い課題意識を有していた。 「看護ナビコンテンツ作成を介したコンサルテーション」は、アプリケーション導入に向けて事前の準備段階で実施され、作成したメンバーと複数の研究者を中心に、プロセスで生じた疑問について解決しつつ、コンテンツ内の項目内容の充実・精査を行った。 コンサルテーションの過程では、組織固有の表記方法が顕在化し、標準化された用語表記との乖離が明らかとなった。また、コンサルテーションの場は、ケア内容を「語る場」としての機能を有し、組織内で看護師が重要視する看護介入の発見や、分散して表記されていた内容が項目として構造的に集約される場となった。コンサルテーションは、看護ナビコンテンツの理解のみならず、組織がもつ看護の力を再認識する場となり組織がもつ課題や強みの発見の場としての機能を有していた。