【目的】入院患者に対して褥瘡の専門チーム医療を実施している病院が多い。このような部門横断型で臨床管理すべき並列する課題が、臨床現場にはいくつか存在する(褥瘡・術後せん妄等)。本研究の目的は、データに基づく部門横断型の専門チーム医療を実現するため、臨床知識の構造化手法を用いた状態適応型のプロセスパス開発を行うことである。 本研究は東京大学の倫理審査と奈良県立医科大学の倫理審査で承認され、両大学のアカデミア間共同研究の中で実施された。
【方法】臨床知識の構造化研究である「患者状態適応型パスシステム(PCAPS)開発研究(2004~2007年厚生労働科学研究助成事業)」を経て、2015年前後に褥瘡のプロセスパス研究が実施された。DESIGN-Rを用いて創状態の類型化を行い、検証調査を経て6ユニットが特定され臨床プロセスチャート(CPC)とユニットシート(US)が開発された。今回、「改定DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント」等に基づく新たな知識の特定・構造化、CPC・USの改訂を行った。実運用されている臨床支援アプリケーション(チームコンパス)上に搭載するため、1)褥瘡管理を支援するための臨床知識の構造化と標準化 、2)病院標準をつくる効率的な手順の開発、3)構造化臨床知識のデジタルコンテンツ化、4)臨床支援システムに必要とされる機能の特定、を行った。1)~4)の成果を、900床のチームコンパ実装大学病院に適用し有用性を検証した。2022年1~2月にデータドリブン褥瘡ケアプロジェクトを企画しチームを形成した(医師2名、WOCナース、看護部門の情報担当チーム、医療情報部長&パス委員長、看護研究者、工学系研究者、SE)、チームミーティングと作業を3~5月に実施し、標準臨床知識コンテンツの評価改良と自院での運用可能性について検討した。開発された臨床知識コンテンツとシステム機能についてチームの合意を得、実臨床での運用形態や組織化の課題が特定され議論された。
【考察】標準的臨床知識を実臨床で再利用できるように構造化していくことで、日常業務の中でデジタルデータが蓄積され、臨床のPDCAサイクルがデータドリブンで実現できるようになる。このような部門横断型の専門チーム医療を支援する仕組みとなり得ることが期待される。
本研究は、文部科研 基盤研究(B)(22H03373,代表:水流聡子)により実施された。
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