本研究は、配偶子提供を受けて生まれた子どもに対して、親が出自を伝えるか否かの意思決定に関連する心理的要因について大学生を対象として調査したものである。データは自由記述によって収集し、内容分析を行った。その結果、積極的に伝えようとする理由には、「真実を子どもが知ることによる親子関係の崩れに対する懸念」があり、伝えるつもりがない、あるいは子どもが知りたいと願った場合にのみ伝えるという人々は、「真実を知りたいという子ども自身の意思にゆだねたい思い」があった。本結果と先行研究から、子どもへのテリングに関して親が先送りしたい、あるいはためらいがあるかもしれないことを支援者は理解しておくことが必要である。また、提供を考える段階から子育ての全期にわたって、支援者が受容的な態度で、ニーズに応じた相談をいつでも受けられるようなシステムを作ることが望まれる。