本研究は、回想法がなぜ効果があるのかを検討することを目的として実施した。地域在住高齢者8 名を対象に、13回の集団回想法を行った。指標は、回想法開始1 週間前(以下、実施前)と、6 セッション目(以下、実施中)、13セッション目(以下、実施後)、終了1 か月後(以下、1 か月後)において、PGCモラールスケールとバウムテストを実施した。PGCモラールスケールでは、下位尺度の「孤独感・不満足感」において、実施前と実施後の間に有意な傾向が、実施中と実施後の間に有意差があり、改善がみられた。バウムテストでは、印象の変化に着目すると、回想法中のバウムの変化が大きく三種類に分類されると考えられた。すなわち、「回想法実施中は自分で立っていたが、実施後あるいは実施1 か月後に支えが必要となる」、「実施前から実施1 か月後を通しおおむね大きな変化がない、あるいは実施後に形態が変わり実施1 か月後に若干バウムが豊かになる」、「回想法実施中に木が2本になる」であった。語りからの分析では【回想法の場は日常生活とは異なる特別な場】において、【自分のことを語る】という行為と【他者の体験や考えを聴く】という行為を通して起こる相互作用は【自分の体験を振り返る】ということにつながること、そして【他者が自分の話を関心を持って聞いてくれる】ということは、豊かな振り返りを行う上で必要な要素と考えられた。また、このような安心できる場において、自分と他者との間での【感情の表出と共有】は心的に満たされるだけでなく、【葛藤の対象や出来事に対してこれまでとは別の視点から意味づけ出来る】ことや、【過去や今の自分を肯定的に捉えることが出来る】こと、【自他を尊重しつつ、皆でこれからの信条を共有する】ことにつながり、これからの生き方の選択や意思へと導くと考えられ、これらのことが回想法の効果であると考えられた。