本研究は以下の2つの問題を明らかにすることを目的とした。1つは未来を想起したときに死という考えが自発的 に起こる年代を知ることであり、もう1つは死の不安と死に対する態度を、横断的手法を用いて比較することより、 年代の特徴を知ることである。研究対象者は、青年117名、中年142名、老年202名であった。データは、質問紙調 査で集められ、対象者は死別体験、抑うつ、死の不安、死に対する態度に関して回答した。また、未来に対する想 起については自由記述を求め、内容分析を用いて検討した。死に対する態度はDAP (Death Attitude Profile)尺度 を使って評価され、「死の恐怖」因子、「回避的受容」因子、「積極的受容」因子、「中立的受容」因子の4因子 構造であることが確認された。死の不安と死に対する態度のデータは年齢群×性別、年齢群×死別経験、年齢群 ×抑うつを独立変数とする2要因分散分析を用いて検討した。その結果、死の考えが自発的に出てくるのは、ほぼ 老年期からであることが示された。死の不安と「死の恐怖」因子は青年群が他の年代よりも高かった。「回避的受 容」因子、「積極的受容」因子、「中立的受容」因子は他の年齢群よりも老年群で高かった。これらの結果は先行 研究と同様の結果であった。内容分析では、未来に対する想起の内容は、すべての年代に共通して以下の6つのカ テゴリーが得られた。【現在の生活の継続】【これからの生き方】【家族】【健康・病気】【死や死後】【分から ない、考えない】であった。