本研究は「セクシュアル・マイノリティであることによる困りごとがない」と語る4名の50歳前後の当事者を対象として行った。本研究では,そうした困りごとがない状態について社会適応が出来ている状態と捉えた。グループインタビューにより,これまで生きてきた経験の中で得た考えを尋ね,KJ法による分析から当事者の社会適応を支えるものについて明らかにすることを目的とした。
その結果,①ありのままの自分を認めてくれる家族や周りの存在,②自身が置かれている状況を無理に変えようとせず,折り合える自己調整の思考,③自身のアイデンティティを捉えるにあたって,セクシュアル・マイノリティという枠組みではなく,自立して生きる「一人の人」であるという思考という特徴が示された。本研究で明らかにされた社会適応の特徴は,中高年セクシュアル・マイノリティの孤独の問題やメンタルヘルスの低下の予防に役立つと考えられた。