臨地実習において、看護師や教員といった実習指導者の態度は、看護学生の学習に影響を与えるため重要である。また、看護学生は看護を行う対象者(患者、家族などといった看護の対象)との関係づくりや看護実践を通して多くのことを学んでいる。そうした看護師や教員といった実習指導者や看護の対象の態度が、次の実習にむけた看護学生の自信や意欲につながると考えられる。その一端を明らかにするために、本研究では、看護学生自身に対するバランスのとれた見方としてのセルフ・コンパッション、これまでの実習や演習等において実習指導者や看護の対象からほめられた経験、ほめられた経験に対する学生自身の受けとめ方としての心理的反応、および学生自身が設定した実習目標達成度が、次の臨地実習に向けた自信としての臨地実習効力感にいかに影響するかについて検討することとした。臨地実習効力感は、「対象の理解・援助効力感」、「友人との関係性の維持効力感」、「指導者との関係性の維持・学習姿勢効力感」から構成されている。重回帰分析の結果、「一生懸命に取り組んでいるとほめられた」「よく勉強しているとほめられた」といった、学生の行動について実習指導者や看護の対象からほめられた経験は「対象の理解・援助効力感」に影響していた。また、ほめられたことによって起きる「やる気になる」「うれしい」「自信がもてる」といった心理的反応は、「友人との関係性の維持効力感」に影響していた。さらに、セルフ・コンパッションと「行動についてほめられた経験」と「実習行動目標達成度」が「指導者との関係性の維持・学習姿勢効力感」に影響していた。このことより、看護学生は、実習指導者や看護の対象によってポジティブフィードバックや言語的賞賛を与えられることは、実習行動目標の達成や、次回の臨地実習に向けた自己効力感に影響することが示された。