目的:日本産婦人科学会は、不妊症について、男女ともに加齢のリスクから治療を先送りせずにすぐに治療開始したほうが効果的である場合もある、と述べている。そのためには、適切な時期に不妊クリニックを受診することが必要である。しかし受診するには、その決断に関係する要因があると考えられる。そこで、本研究の目的として、不妊治療中の女性を対象として、受診行動を促進する要因および抑制する要因について検討を行うこととした。
方法:アンケート調査を実施し、受診行動に関する促進および抑制要因について、年齢(20代、30代前半、30代後半、40代)と受診までの期間(1年以内とそれ以上)を要因とした二要因分散分析を行った。
結果:139名の回答を得たが、4名のデータに欠損があったため、最終的に135名の回答を分析対象とした。①20代や30代前半に比べて30代後半は「自分の年齢」が不妊治療開始の受診促進の要因となっていた。一方、他の年齢群と比べて40代は、「自分の年齢」が促進要因にも抑制要因にもなっていた。②20代よりも30代後半、40代は、「高齢になると妊娠しにくくなるという知識」が受診促進の要因となっていた。③挙児希望から受診までの期間が1年以内より、13か月以上の方ほど「高齢になると妊娠しにくくなるという知識」が受診促進の要因であった。また、「治療しないでもそのうち妊娠するのではないかという思い」は受診抑制の要因となっていた。
考察: 40代は、「自分の年齢」から葛藤を伴いつつ受診している可能性があるため、相談時においてその心情を傾聴する必要がある。また、妊孕性に関する正しい知識の情報提供は適切な受診行動につながると考えられた。