本研究では、精子・卵子提供を受けるかどうかの意思決定に至る心理要因を検討するため、大学生を対象として調査を行った。この検討により、精子・卵子提供を考えている人々に対して、心理援助者がカウンセリングを行う際の心構えを知ることが出来ると考えたためである。調査より得られた自由記述を内容分析を用いて検討した。その結果、「提供を受ける」の決意に至る場合、【おなかを痛める、おなかで育てるという女性性の確認】、【どうしても自分の子どもが欲しい】、【残された妊娠、出産の可能性の挑戦】、【対象者の利益、保護のため】といった心理要因がみられた。また【夫婦や夫婦の両親による納得、同意が必要】とは感じていたが、【子どもと向き合う親としての覚悟と強い決意】、【子どもを愛し育てる自信】について自分には「ある」と感じており、【血のつながりに関する気がかり】、【養子をもらう、他のことに打ち込むなどの選択肢】については「ない」と感じていた。このことから、妊娠を目指している間や妊娠中は、対象者はさほど心配事を心配事として感じられないかもしれない。しかし出産後や子どもの成長につれて、テリングをどうするかということや親子関係に関してなど悩む時がくるかもしれない。よって、相談窓口や支援者はかなり長期的な支援を念頭においておくことが重要であると考える。