本研究では,知的障害特別支援学校における恋愛や交際に関する校則等の指導の実態と学校内における知的障害のある児童生徒の恋愛行動に関する養護教諭の考えを明らかにすることを目的とした。2018年3月に養護教諭320名を対象に,「恋愛や交際に関する校則・学部内における指導上の約束事の有無とその内容」,「知的障害のある児童生徒の恋愛行動は,学校内においては,生徒指導上,制約を加えざるを得ない」と考えるか否か等について郵送法による質問紙調査を行った。なお,調査は,京都教育大学研究倫理委員会の承認を得て実施した。その結果,111名(34.7%)から回答があり,そのうち106名を有効回答とした。養護教諭の回答結果より,恋愛や交際に関する校則のある学校は1割弱,学部内での指導上の約束事があるのは2割程度あり,その内容には,「二人きりで会わない」「男女交際禁止」が含まれていた。「恋愛行動は,学校内においては,生徒指導上,制約を加えざるを得ない」に対する養護教諭の考えは,「そう思う群」が約半数あり,回答者の年齢に偏りはあるものの,特に,40~49歳で他の年齢より「そう思う群」の回答割合が高かった。恋愛行動について「制約を加えざるを得ない」と考える理由について,「そう思う群」の自由記述内容を分析し,キーワードとして,多い順に「行動」,「行う」,「判断」,『むずかしい」があげられた。「行動」「行う」に関連する内容には,「気持ちで行動するため」「理性的な行動をとることが難しい」「衝動的な行動をとってしまうことがあるため」等が,「判断」に関連する内容には,「自分で判断することが難しい」「常識的なところでの判断」「知識や判断に課題がある」「どこまでなら大丈夫か等の判断が難しく,エスカレートする傾向にあるため」などがあげられた。同時に行った他の調査では,児童生徒の恋愛行動に対し,養護教諭の抱いた感情は「心配」が多く,児童生徒の行動,判断面での課題意識や「制約」の見解に影響している可能性が示唆された。