恋愛や交際の授業は、性的自己決定等にかかわる重要なテーマであるが、学校で十分に扱われていない背景から、知的障害特別支援学校における授業の実施状況および授業実施の規定要因を明らかにすることを目的とした。
方法は、調査1 では、全国の知的障害教育を主とする国立大学法人の附属特別支援学校42 校の学級担任370 名を対象にした質問紙調査の分析を行った。調査2 では、調査1 の学校の教諭8 名を対象にしたインタビュー調査を行った。内容は特別支援学校教員歴5 年未満の頃の自分を思い出し、何があれば授業が実施しやすかったかについてであった。研究協力者の許可を得て発話内容をIC レコーダーに録音し、後日、逐語録を作成、テキストマイニングにより、キーワードの重要度や関連度を分析した。
本研究結果として、調査1 では、恋愛や交際の授業経験がある教諭は、3 割と少なく、授業実施の規定要因には、経験年数の浅さ、教員研修の機会の少なさ等があげられた。特に、特別支援学校教員歴5 年未満の教諭では、5 年以上の教員歴の教諭と比較し、授業の経験が有意に低いことが明らかになった(学校保健研究59 巻で発表)。調査2 では、研究協力者の平均特別支援学校教員歴は7 年6 カ月で、重要ワードの上位には、「学ぶ、あれば、分かる、違う、自分」があげられた。「学ぶ」は、「大学、確か、記憶、機会、無い」との共起性が高かった。セクシュアリティ教育について、大学で学ぶ機会がないこと、特別支援学校教員歴5 年未満の教諭は、目の前の優先課題に追われるなど余裕がないこと、さらには、年間指導計画がない中では、ゼロの状態から授業に取り組まねばならないことが、授業が実施しにくい理由として語られた。今回の応募は、前回の調査から発展し、保護者が捉える児童生徒のセクシュアリティの学習ニーズについて把握し、今後の教員研修内容について検討するための基礎資料を得るもので、調査対象と内容に相違がある。