いりこはカルシウムが豊富な食品として知られているが、含まれるカルシウムは不要性のリン酸カルシウムが主であり、調理法を工夫することで吸収を高められると考えられる。本研究は、いりこのカルシウムの可溶化を促進する調理方法を検討することを目的とした。 いりこは山口県周防大島産のものを用いた。いりこの種類としてはちりめん(4㎝)、かえり(5㎝)、小羽(7㎝)、大羽(9㎝)の 4 種類を用いた。カルシウム可溶化試験では、いりこ 5g に対して食酢あるいは果汁5ml、もしくは酢味噌 5g を加え、一定時間置いた後にホモジナイズし、遠心分離して得られた上清を 550°Cで灰化後、1% 塩酸で希釈し原子吸光光度計にて測定した。 いりこの種類や出汁の調製法を変えても、いりこ出汁中には、ほとんどカルシウムは含まれず昆布出汁と同程度であった。食酢あるいは長門ユズキチ果汁を添加し 30 分静置した場合、サイズの小さい「ちりめんいりこ」からのカルシウム可溶化率が高かった。山口県の伝統料理「ちしゃなます」(いりこを加えた酢味噌でちしゃを和えた料理)を想定し、いりこに同量の酢味噌をまぶして 30 分静置した後のカルシウム可溶化率は、味噌だけをまぶした場合に比べ、食酢味噌では約 3 倍、長門ユズキチ酢味噌では約 4 倍に上昇したが、カルシウム可溶化率は、酢あるいは果汁のみを添加した場合に比べて低い値となった。