大学生のクリティカルシンキング育成は、米英豪の動向において見られるように、日本においても昨今の課題となっている。本稿の目的は、学士課程教育を通して学生のクリティカルシンキング(CTと表記)を育成する際に課題となるCTの概念、能力の内容、育成方法に関連する主要な先行研究を整理し、大学生の発達課題を踏まえた教育方法およびその授業実践例を提示することである。本稿では、カリキュラム横断的にCTを育成する際の理論的前提となる、以下の4つに焦点をあて、文献レビューに基づき検討した。1)CTの定義と学生の学修成果、2)CTの一般化可能性と転移可能性、③CTをカリキュラムに組み込む際の4つのアプローチ、4)大学教育におけるCT育成の課題と効果的な教授法。さらに、技能だけではなく態度も含む、コンピテンシーとしてのCT育成の一つのあり方を示す授業実践例を提示した。結論として、大学生のCTを涵養するためには、学生の認知的発達を考慮しつつ能力および態度形成を図ることが必要であり、その方法として、メタ認知を促す協働的学習が有効性をもちうることを指摘した。