2013~2015年に実施された生活保護の基準引き下げに対する集団訴訟の名古屋地方裁判所及び大阪地方裁判所の判決における課題ついて考察し、以下の事を提示した。生活扶助基準の算定においては、厚生労働大臣が、社会保障審議会の下に設置される生活扶助基準部会等の意見を受け、消費者物価指数のデータ等を用いて決定すべきである。また、国民感情を反映させるとして生活扶助基準の改定を行うことは、政治的意図の介入にもつながることから厳に避けなければならないと考える。そのうえで、生活保護制度が、資本主義社会における所得の再分配機能を担っていることから、生活保護基準の切り下げについては慎重を期すべきと考える。