精神障害者のQOL及びリカバリーとサービス評価との関連:パネル調査による効果測定
2017/04-2020/03
石田賢哉
大山 勉, 手塚 祐美子, 中川 正俊, 清水 健史
本研究の目的は、福祉サービスの利用によってどのように精神障害者のQOLが向上し、リカバリーが促進されるのかを統計的手法によって明らかにすることである。リカバリーの測定はRecovery Assessment Scale (RAS)を使用した。RASは最小値24、最大値120であり得点が高いほどリカバリーが促進していると評価ができる。横浜市及び青森県の35の施設・事業所の協力を得て、平成29年10月に第1回目のQOL及びリカバリーに関するアンケート調査を実施した。平成30年度は、6か月後の調査を平成30年4月(第2回目)に、1年後の調査を平成30年10月~11月(第3回目)に実施した。調査は任意であり、同意の得られた利用者のみ回答をしてもらい、施設・事業所職員も調査内容がわからない形で回収をした。ベースライン(第1回目)619名(RAS回答521名)、6か月後(第2回目)211名、1年後(第3回目)72名から回答を得ることができ、データの連結をおこなった。ベースライン時のRAS平均値は82.6(SD=19.0)、6か月後の平均値83.2(SD=19.2)、1年後の平均値83.7(SD=18.8)となっていた。全てにおいて最小値は24、最大値は120となっていた。研究対象は障害福祉サービス利用が1年未満の者であり、ベースライン―6か月後のRAS回答は31名であった。ベースライン時のRAS平均値81.6(SD=19.8)、6か月後85.4(SD=19.8)で平均値の差は有意傾向にあった(df=30、t=1.61、p=0.119)。障害福祉サービス利用開始から6か月の経過のなかでリカバリーが促進された利用者が多いことが明らかになった。