【目的】生薬であるトウキ(当帰)の根は血圧上昇抑制作用の指標である ACE阻害活性を持つ.一方,葉及び茎部分はほとんど利用されていないが,ACE阻害活性が存在することが報告された(浅尾ら, 2011).我々は各部位の ACE 阻害活性は温度安定性が高いことを報告した(村地ら,栄養改善学会中国支部,2017)が,今回トウキ葉の加熱加工食品への利用を目的として ACE 阻害活性の測定及び官能評価を行ったので報告する.
【方法】トウキの葉の粉末を添加したバターケーキ,食パン及びうどんを作製した.各食品の 40 ℃ 水抽出物及びうどん茹で汁について ACE 阻害活性の測定を行い,50 % 阻害濃度(IC50 mg / ml)により阻害活性を比較した.また,各食品の官能評価を行った.
【結果及び考察】トウキ葉粉末の ACE 阻害活性は IC50 2.4 mg / ml であり,バターケーキ,食パン及びうどん各々の ACE 阻害活性はトウキ葉粉末の添加量に応じて高くなる傾向が見られた.うどん茹で汁の ACE 阻害活性が高かったのは,トウキ葉に含まれる ACE 阻害活性物質が水溶性であり,湯画分へ溶出したことが原因であると考えられる.3種の食品の官能評価は,トウキ葉粉末の添加量が増えるといずれも悪くなった.3食品での比較ではバターケーキが最も好まれた.これらの結果から,トウキの風味は強すぎると好まれないが,油脂や甘味によってある程度マスキング可能であると推察する.