魚を利用した嗜好性の高いパンを開発することを目的とし、副材料を添加することで魚臭を低減させたパンの作製を試みた。具体的には、魚種として平太郎(オキヒイラギ, Equulites rivulatus)を利用したパンに副材料として緑茶粉末を加えた結果、緑茶の風味によって官能的な魚臭を低減することができた。また、平太郎を利用したパンに副材料としてすりゴマを加えた場合でも官能的な魚臭を低減することが可能だった。しかしながら、焼成後のパンにおいて生地の膨張性の不足、および生地中の気泡に不均一性があるという問題が生じた。そこで、平太郎の前処理方法を工夫することで問題を克服することができないか検討した結果、膨張性と気泡むらを改善することに成功した。
以上の成果により、平太郎を利用したパンの低臭化技術を確立することが達成できた。開発した技術を用いることで、広く消費してもらえる条件を備えた平太郎パンを製造することができ、学校給食としても供給可能なパンを製造することも期待できる。魚の摂取を好まない児童に対する食育効果を期待できる上に、魚素材を用いることで一般的なパンよりも栄養価を高めることができ、さらには山口県の水産資源の有効活用に貢献することが期待できる。