本研究は社会的に望ましくない規範についての個人のwhistleblowing行動に,集団内の人間関係,被害の深刻さ,通報先が与える効果について検討した。研究参加者は179名の男女大学生であり,場面を想定した質問紙への回答を求めた。質問紙は,3(集団内の人間関係:良好・中性・不良)×2(被害の深刻さ:甚大・軽微)×5(通報先)の要因計画を持つものであった。結果より,被害が軽微な場面では良好な人間関係の場合の方が不良な場合に比べwhistleblowing行動が多かった。一方,被害が深刻な場面では人間関係の効果は見られなかった。このように個人のwhistleblowing行動の発生について人間関係の良否と被害の深刻さの交互作用が見いだされた。